黒田新総裁にとって初めてとなる2013年4月3・4日の日銀金融政策決定会合において市場の事前予想を上回る質・量共に大規模な金融緩和が行われました。
しかし、事前予想で可能性の一つとして挙げられていた超過準備預金付利の引き下げは当会合において見送られました。
この付利と言われる金利は、銀行などの各対象金融機関が日銀に預ける当座預金のうち所要準備預金額を除いた金額に付与され、現在は年率0.1%です。
具体的な準備率や実績はこの辺りを参照して下さい。
準備預金制度における準備率
業態別の日銀当座預金残高
銀行にとってみれば日銀に預けることによって自動的に付利金利がもらえるので、それ以下の金利だと運用するインセンティブが働きません。以前のメガバンクは例え付利金利以下の運用になろうとも超過準備額を限りなく0に近づける芸術的なオペレーションを行なっていたりしたものですが、この長引く金融緩和環境ではその機会損失もバカにできなくなったのか近頃の超過準備額がだいぶ増えています。
過去を見てみますと、2000年代前半の量的緩和時には付利はなかったので、短期金利は0%に張り付き、短期市場機能は崩壊しました。各金融機関は短期市場で運用しても儲からないどころかむしろ事務コストがかかるので、別の部署に異動させて担当者を減らしたり、新人を担当にしてコストカットしました。そうすると、いざ緩和終了、金利上昇の場面になった時には既に経験者がおらず、市場調節に苦労したようです。そんな教訓もあって、付利を付与することで0.1%を中心に金利が上下する市場機能を辛うじて維持しているのです。
リーマン・ショック以降、度重なる金融緩和を進めた結果、日銀がいくら市場への資金供給を行なってもそのほとんどがそのまま当座預金に預けられていて、日銀-銀行間でお金のキャッチボールをしているだけと表現されたりします。
その証左として預貸ギャップ(預金-貸出)がよく使われます。
このグラフは日銀のホームページから国内銀行の預金と貸出金のデータを取得して作ったものです。「預貸ギャップ」でググって得られる数値とは厳密には異なりますが、傾向はつかめると思います。
グラフを見ると預貸ギャップは右肩上がりで預貸率は右肩下がりです。銀行は集めた預金を貸出に回していないことがわかります。一般的には国債などの有価証券運用に回しているようです。
ここで話は今回の日銀の金融緩和に戻りますが、「やれることは全てやった」と言う質・量共に大規模な金融緩和を行ったことによって今後の日本の不況脱出のための手段のボールは日銀の手からは完全に手を離れ、政府・経済界に渡ったと言えます。
銀行も安穏としていられないと思います。預金者が預金を引き出して投資に向かえばいいんですが、そうじゃない場合は銀行が貸出を増やすなりして預貸率を上げずに景気浮揚に貢献していないと見なされると、どちらかと言うと懲罰的な意味合いで不利の引き下げ、もしくは撤廃が行われるんじゃないかと思います。日銀は当座預金においてもらうだけのために金融緩和してるんじゃないんですもんね。
付利下げ自体は株や為替市場にほとんど影響ないと思うんですけどね。ゼロとは言いませんが。
以上、与太話でした。
ついでに、今回の緩和で今は長期金利のボラが出てますが、日銀のオペレーションを何回かこなして目線が定まってくると、証券会社のJGBデスクや銀行・生保・信託等の投資家側のJGB担当者はやることが減ると思うんです。その状態が長く続くと以前の短期市場状態(担当者減・経験者不在)と同じになってしまい、いざ緩和の出口を模索するときにものすごく困る気がしますし、そうなったら短期の時どころのさわぎじゃないと思うんですけど、どうなんでしょ。
ま、そんなこと心配するより先ずは景気回復ですね。
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